「日本の教育」真似している国を間違えていませんか?

教育は発展問題に大きく関わっているので、教育の話には自然と耳がよっていってしまう。


日本も北欧の教育制度を真似ようとがんばっているみたいですが、PISAOECD生徒の学習到達度調査)で常に上位のフィンランドの教育はなかなか出来ていますね。今朝見た新聞によると、フィンランドの教育は:

  • 考えを手伝う教育。
  • 少数学級で対話を大切にする。
  • 目安に過ぎない指導要領。
  • 先生達の現場に大きな決定権を与える。
  • 小学生の先生は全て修士を取得、専門性をあたえる。
  • 地域や親も教育に参加している。


結果、生徒だけでなく先生方にもやりがいのある仕事なようで、競争率10倍で、弁護士や医者などの様に憧れの職業のようです。先生方が全員博士号を取得する制度も考えているそうです。

前にも書いたが*1、ここで目先の事だけを考えて「先生に修士を取得させれば解決」とか、クラスを「小さくすれば『考える教育』完成」とか考えたら、またまた「ゆとり教育」の二の舞になってしまうので日本の教育関係者が早合点しないことを望みます。

それにしても、「先生方が全員に博士号」ですか。日本の青森の件とは似てかなり異なる状況ですね。そういえば、日本も教員の倍率が高いそうですが、先生の質はどうでしょう。花形職業なのでしょうか。


ところで、イギリスの教育はどうでしょう。正直自分の子供をここの小中高に通わせるのは考えます。お金があれば別ですけど。


イギリスもゆとり教育みたいなものがあって、BBCが行った調査では学力は落ちているそうです。大学の行くための基準のAレベルといわれる全国統一のテストも「相対主義」から「絶対主義」になったため、ほとんどみんなAを採ってしまう状況。そんな状況なので、大学への入学は「有名高校出身」とか「親の仕事」などが基準になってしまいます。

つまり、お金のある親は有名私立に子供を入れれば後は安泰と思っているふしがあります。お金のない親も無理に私立の高校に入れている状況です。

それから、イギリスは個人主義で社会ネットワークが崩壊しているの「地域や親も教育に参加」など見た目だけの感があります。元先生や現役先生の話を聞くと、生徒のわがまま、暴言、暴力に何もいえないのが腹立たしいそうです。こんな状況では先生は花形職業とはいえないでしょう。

さらに、個人的には日本の中学生レベルから、専攻をもたせる事も考え物だと思っています。数学や歴史をとらないと決めた人は、高校からそれらの科目を勉強しなくても良いという制度です。そんな幼いときから、自分の将来が見えている人がいるでしょうか。将来小説家になると「思って」、15歳で数学放棄したら、18歳で考えが変わって工学部に行くことは不可能でしょう。


なんだか、イギリスの中等教育*2の問題点を書いていたら、「失敗した10年後の日本の教育シナリオ」に見えてしまった。

なんだか、真似している国を間違えているみたいです。


追記:
それでも、イギリスが多分大丈夫なのは、天才君や秀才君を輸入してくればいいだけの事だからかもしれません*3

経済協力開発機構OECD)の国際学習到達度調査(PISA)でトップクラスを維持するフィンランドに、世界中から教育使節団の訪問が相次いでいる。人口527万の“森と湖の国”に起きた教育の奇跡を探ろうと、欧米の競争至上主義者も血眼になっているのだ。しかし、そこには特別な秘密も最先端のノウハウも存在しない。教師への尊敬と1人ひとりの子供を育てたいという愛情が国全体に根差し、大きな花を咲かせていた。

 北欧の小国、フィンランドのイメージといえば、少し前までは「ムーミン」「サウナ」くらいだったように思う。ところが、今は「学力世界一」で注目を集める。過去3回の国際学習到達度調査(PISA)で常にトップクラスの成績を収めた理由は?

 フィンランドのPISAの成績を見ると、2003年=数学2位(日本6位)▽読解力1位(同14位)▽科学1位(同2位)▽問題解決2位(同4位)。06年=数学2位(同10位)▽読解力2位(同15位)▽科学1位(同5位)。

☆だから、日本の教育関係者は、すぐにフィンランド・メソッドに飛びつく。がその前に、フィンランドモデルと日本モデルの違いを知っておいた方がよい。
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☆日本では教育・研究と経済は切り離されている。フィンランドでは、そこの解決にチャンレンジしている。この違いを知らずして、フィンランド・メソッドを導入することは難しい。

*1:「答えの無い問いに答えを生み出す」こつ http://d.hatena.ne.jp/euro-envi/20080418#1208550781

*2:大学の教育はまた別。オックスフォードなどのチュートリアル・システムは良いと思います。大学院になるとまた問題が出てきますが、それはまた別の機会に。

*3:参院選と、「格差是正」と、「合成の誤謬」と、天才君の結婚式 http://d.hatena.ne.jp/euro-envi/20070730#1207978272