インドネシアの気候変動適応策の現状と課題 〜メインストリート化〜

インドネシアに来て早2ヶ月になる。気候変動の適応策と言われるの調査色が濃いプロジェクトをしている。せっかくなので、インドネシア脆弱性評価をまとめてみた。





2007年に第13回目の国連気候変動枠組締約国会議がインドネシアのバリ島で開催され、2013年以降の次期枠組みの合意に向けたバリ行動計画が作られた。この行動計画で大きく注目を集めた一つの内容は気候変動への適応策である。つまり、気候変動によってもたらされる影響に関して、直接的又は間接的に対策をはかる事となった。二酸化炭素の排出量の削減を続けたとしても、既に気候変動からの影響は避けられない為、影響に対する適応策をこうじる必要がある。実質COP13で適応策はタブー視されなくなり、排出量削減の努力をするように、適応策は国際協力の重要課題になったと考えてもよい。その為、バリ島とインドネシア政府は気候変動適応策への重要な歴史の1ページを提供した事となった。インドネシアは気候変動の影響を受け易い地域と言われているので、気候変動適応策は国際政治以外の観点からも、重要度が高い。



インドネシアは、世界で最も大きい群島国であるので、海洋大陸と言われている。大部分のインドネシアは、2000mm以上の年間雨量があり、高い湿気と雨量は、気候が劇的に変化することを妨げている。その為、インドネシアの平均温度は、全群島でわずかの違いしか無い。しかし、気候変動によりその気象システムが変化する事が予測され、気象に関する災害からの影響が大きい国の一つと言われている。気候の変化により、気温の上昇だけでなく、かんばつや洪水の規模と周期に影響が出ると予想される。その為、影響を受ける範囲は、食糧安全保障、環境衛生問題、海面上昇など多岐にわたる。12月〜1月の雨季にジャワ、パプア、スマトラの一部の地域とカリマンタン諸島の大部分で雨量の減少している (KLH 2009 p. IV-3)。そして、大部分のジャワ島とバリ島を含む東部インドネシアで降雨の上昇が観察されている。6月〜8月の乾季に、大部分のインドネシアの地域で雨量の減少が観察されている。温室効果ガスの濃度の上昇によって、これらの変化は続き、インドネシアにより大きな気候に関するリスクをもたらすであろう。



気候変動からの影響が大きくなり、適応策を考えるとき、策は国の開発計画に統合されて考えるべきとされている。すなわちメインストリーム化である。気候変動の適応策は水資源の確保や堅固な農業の推進など、途上国の開発問題に直結した内容であることが多い。メインストリーム化することにより、一石二鳥で開発と適応策を効率よく達成することになる。そして、不確定要素が多い気候変動リスクへの適応策に効果がなかったとしても、メインストリーム化しておけば、一石一鳥で途上国の開発は促進される。インドネシア政府も、気候変動と開発問題の関係に関心をもっており、周辺諸国と比較しても、政府が制作する中期開発計画は気候変動に対する脆弱性と適応策が良く組み込まれてある。政府は、最近の中間開発計画を更新したが、その中で、重要な政策戦略の優先項目には、いくつかの気候変動適応策に関連する事が書かれている(Indonesia 2009)。



例えば、教育と健康を含めた、公益事業の交付の改善をひとつの優先項目に上げている。気候変動により、もし伝染病が今まで存在していなかった地域に拡大した場合、それに対応すべき新たな事業を迅速に立ち上げる必要性が出てくるであろう。その時、公共事業の交付がスムースに行われる事は適応策の一つと考えても良いのでないだろうか。開発計画や気候変動適応策で共通している言えることは、財政的な制約のため、公共事業に民間セクターを上手く取りいれる必要性がある。そして、インドネシア政府は民間部門参加により、既存の基盤とユーティリティの効率を改善することも視野にいれている。



水資源開発計画の優先項目は水資源の確保である。既存の水源確保を効率化して、貧困者へ良質な飲料水を供給する。降雨量の変化に伴い、水資源は気候変動から影響を受け易い分野であり、貧困層は気候変動に対しての脆弱性が高いと言われている。その為、この優先項目も気候変動に大いに関連がある政策と考えられる。政府は2014年までに、これらの優先項目を実施しやすくすることを目標にしている。その他にも、インドネシア政府は環境機能の改善と持続可能性を開発計画にメインストリーミング化する事も考慮に入れている(KLH 2010 pp. 8-9)。 今後の適応策プロジェクトは、これらの開発と適応策の分野を優先項目に従いサポートしていく必要がある。


参照文献


Boer, Buono, A. Rakhman and A. Turyanti. 2009. Historical and Future Change of Indonesian Climate. in MoE. Technical Report on Vulnerability and Adaptation Assessment to Climate Change for Indonesia - Second National Communication. Jakarta: Ministry of Environment and United Nation Development Program.
Indonesia. 2009. Overview of the Indonesia's Medium Term Development Plan 2004 - 2009.
KLH, Indonesia. 2010. "Mid-Term National Environmental Plan 2010-4 (NARASI).".
KLH, Indonesi. Summary for Policy Makers: Indonesia Second National Communication Under the United Nation Framework Convention on Climate Change (UNFCCC).