MFIはもっと貪欲であるべきか

マニラに帰ってきたので、1月7日のメモ。

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このマニラの滞在記は、Living in Peace(http://www.living-in-peace.org/)の活動と、グラミン・ファウンデーションの「Bankers without Borders」プログラム(http://www.grameenfoundation.org/take-action/volunteer)の一環でとして行っている。
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今朝4時起きで、あるMFIの視察に出かけた。数週間前に富士山に似た山が噴火したと、日本でもニュースになっていた場所である。その前に、現地でマイクロファイナンスをコーディネートをしているダンさん(Dan Songco Pinog ME)と、教会系のMFIを設立した神父ジョービック(Fr. Jovic E. Lobrigo)と、GFのクリストファーと朝食で、MFIの利益率の話になった。

ダンさんはMFIはもっと利益率を追求するひつようがあると言っていた。彼のロジックは、利益率を追求しないと、MFIは安心して、貧困層にローンを提供できない。マイクロファイナンスが飽和しているといわれているのは、貧困層にMFIが向いていないからだと。つまり、利益率が上がれは、内部補助(Cross subsidy)をして、貧困層にもローンを提供できるというロジックだ。しかし、問題はこのロジックはオートマチックではない事だ。利益率を目指して大きくなることに目標にいるMFIは、利益率が上がればもちろん、自分のMFIが大きくなる事にその利益を使うことになる。「十分に利益率がでたら、貧困層にもローンを提供できる」といっても、ボトムラインが違うのだら、その「十分になる」時期は将来も現れないだろう。

つまり、開発の考え方をしっかりと持っているMFIが大きくなるか、利益率を追求しているMFIの考え方をかえるしか、ビジネスと開発のダブル・ボトムラインを達成できることは無いだろう。神父ジョービックのMFIは前者の開発のスピリットを持ったMFIだ。

ここの事務所を尋ねたのでまとめる。

Simbag SA PAG-Asenso. Inc.(SSPA)は15年前に神父ジョービックによって、設立された、7年前に教会から独立したが、それでも、教会系のMFIとしてのステータスを色々なところに残している。例えば、資金は教会から安く借りて成り立っている。そして、センターミーティングのはじめに聖書を読む時間が割り当てられている。現在、23,000のローンメンバーがおり、19の支所があり、181人のスタッフと抱えている。ローン・オフィサーのキャパシティは一人当たり300人のメンバーと考えられている。ひとつの支所には5−7人のローンオフィサーが配属される。そして、19の支所があるので、最高で28500から39900人のローンメンバーを受け入れることができる計算になる。つまり、稼働率は80%から57%になってしまう。利益率をそれほど求められない為の非効率性でもあるとも考えられる。これが、ダンがいっている「利益率をあげろ」といわれるゆえんである。

ここのマイクロ・ファイナンスはローンだけでなく、マイクロ預金や生命保険もおこなっている。不履行率は2%だが、フィリピンは災害がおおいので、タイフーンなどにより、不履行率は変化する。例えば、2006年のタイフーンの災害の時は不履行率が5%まで上昇した。このMFIのメンバーであることをやめる、ドロップアウト率は14%で、フィリピン平均の30%に比べると非常に良い状況である。この低いドロップアウト率は、メンバーに成っていることによる付加価値にあると思われる。例えば、メンバーになって、1年たつと奨学金制度に参加する事ができる。その他にも色々は、付加価値があるが、その他にも、教会系ののMFIであるために、メンバーのロイヤリティが高いことも考えられる。平均、年間1000の新しいメンバーがこのMFIに参加している。金銭的には、これは大体1千万ペソの増加である。現在、それほど、アグレッシブに成長を期待しているわけではないが、アグレッシブに成長するなら、農業の関連の保険やローンに進出する必要がある。

SSPAが現在持っているローン・プロダクトは、家の改修等のローン、生計の為のローン、マルチ・パーパスのローンで、月2%の金利が掛かる。これは、マイクロ・ファイナンスの市場価格考えると非常に低いものに成っている。それは、上記の述べたように教会から低い金利で資金を借りることができるからである。これらのほとんどのローンはグラミン方式のグループによるものである。小さいローンは個人のローンであるが、かれらはそのうちにグループ・ローンに移ることを期待されている。

このMFIはインフォメーション・マネージメント・システムを持っているが、GFがうりにしているMOFOSの様なオンラインのシステムではない。インタネットのコストが下がっているので、オンラインのシステムを導入することも大いに考えられると言っていた。ローンのデーターは紙からコンピュータに毎日入力されるので、支所では毎日、情報が更新される。しかし、これらのデータが集められてCEOの机に届くまでには2週間の時間がかかる。オンラインのシステムが導入されれば、この時間がさらに短縮されるだろう。それから、一つ支所に行った時に気づいた事だが、貧困の度合い、過去のローンが目的どおりに使われたどうかの値などのローン以外の情報は紙のまま保存されており、ローンの情報と重ねて分析する事ができない。これは非常にもったいないとおもう。データはそこにあるのに、コンピュータで読める情報になっていないので、将来のローンをデザインする事に使われることは無い。

ローンオフィサーは、センターミーティングを日に二回こなす。二回という数も、クリストファーにすると少ないそうだ。実際、SSPAも昔は日に三回行っていたそうだ。ここにも効率性を改善する余裕がある。しかし、その為にダブルボトムラインのもう一方の「開発の為にマイクロ・ファイナンス」の質が悪くなる可能性のある事を忘れては行けない。この「センターミーティングを日に二回」は組織で統制と取れている。それはMFIに、組織としてのセンターミーティングの方針があるということなので、評価出来る部分だろう。これが、ある支部は2回で、ある支部は3回だと、MFIの組織として評価がさがる。ここはDDで見てもいいところだと、クリストファーさんは言ってくれた。

1回のセンターミーティングは、約2時間。クリストファーさんの常識だと、大体一回30分なので、いかにSSPAがセンターミーティングに時間を掛けているかがわかる。2時間かかる理由に、聖書を読む時間がある事や、付加価値の奨学金の話も混じっているので、時間が掛かると言っていた。1回のセンターミーティングには、30から60人のメンバーが参加する。グループ・ローンなので、5人が集まて、ローンオフィサーとローンの内容や金額を決める。センターミーティングはこのように、ローンの契約をむすぶまでに仕組みであって、契約後に変更をすることを話しあわない。っていうか、ローンの契約は6ヶ月程度なので、変更する仕組みの必要ないのだろう。

全体の印象だが、SSPAは社会的意義の為に投資するなら、最高のMFIだとおもう。しかし、彼らは民間からのお金をひつようとしていない。資金を受けても、かなりセレクトした後だ。投資銀行から融資を受けて、利益率の向上を迫られて、彼らのしたいマイクロ・ファイナンスができなくなるのを恐れている。個人的には、途上国は自分たちのペースで開発を進めればいいと思う。さもないと、なんの為の開発なのか分からない。すべての事でスピードを競う必要は無いのではないだろうか?急がせるのは、先進国同士の開発エゴや、投資銀行の利益率の為なのか?そんな事を考えさせられるMFIだった。