温室効果ガスの排出権取引の将来と余剰投機資金:「1,000兆円はどこへ行く」

温室効果ガスの排出権取引の議論が活発になっていますね。以前、日本のセクター・アプローチにこだわりすぎることの批判を少し書きましたが、海外でもこのアプローチを受け入れてくる方々が多くなってきて、うれしい誤算になりそうです。

このEUと日本の制度の違いが、「企業と政府の結びつき」の違いと言う所がおもしろい。EUのETSが失敗している理由で一番言われるのが「供給上限(Cap)を大きく取りすぎた」事。しかし、この記事は企業と政府の結びつきが弱いことを理由にしている。かなり、日本的な解釈だが、おもしろいと思う。ただ、欧州の研究者達は「企業と政府の結びつき」をいい事だとして、すなおにこの意見に賛同するだろうか。「企業と政府の結びつき」は癒着などいい印象を与えないのも事実。

日本の「セクター・アプローチ」はある程度EUでも評価は受けている。しかし、インドが推進するポスト京都の「一人頭(par capita)・アプローチ」も米国の計画している排出量取引EUのETSにリンクすることを掲げている。好き嫌いをいっても、実際には排出量取引はもう証券化している。ファイナンスはグローバルなシステムなので、日本独自路線を進んでしまうと、日本の携帯電話の様に、どんなに優れていても世界から取り残されることになってしまう。この点は政治の手腕がおおきいと思うが、EU排出量取引方式を批判するだけでなく、現在の世界スタンダードになっている*1この方式にどの様に関わっていくか考えるべきであろう。


今の世界スタンダードであるEUのETSの批判を下記のブログで述べています。

排出権取引とは何か?

福田康夫首相は6月9日、温室効果ガスの排出権取引を今年秋から試験的に行う方針を打ち出しました。ですが、私はもう少し冷静な議論を重ねた方がいいと考えます。仮に排出権取引を行ったとしても、日本の産業界にとってメリットにならないため、積極的な参加は期待しにくいでしょうし、温室効果ガス・CO2が減るとも思えないためです。

先行して実施したEUでは、その効果が明確に示されてはいません。EUの経験をもう少し観察して、冷静に議論をするべきでしょう。


ただ、未に日本にとって一番リスクが高いことは、排出権取引やCO2の排出に駄々をこねて、最終的に予想より高い金額で排出権取引を買わざる得ないことです。

これはそういう主張が、例えば排出権取引などができた場合も、設計を誤るとそこにわっと、資金はこれから数倍になっていくわけですから、投機資金の拡大していく量に受け手の拡大も追いつかない状態ですから、そこは気をつけないといけないと思います。ですから、排出権取引についてもベンチマーキング、基準点をしっかりつくらないと大変なことになると言っているのは、石油価格が6年で6倍に上がったように、CO2価格がきちんとした設計をしておかないと、予見性がなくて数年で数倍に上がるという危険性があります。そうすると、企業にしてみれば将来の投資計画、予見可能性も全く失われてしまうわけなのですね。だから、その辺を気をつけるという意味では、石油先物市場のこの取引価格の暴騰をしっかりと経験値とする必要があると思います。

石油が需要とはかけはなれが金額に釣り上がっているのは、300兆といわれる投機資金の行き場がないことであり、これは近い将来に1,000兆円になるかもしれません。同じ事が排出権取引でも言えるかもしれません。日本はCO2の排出を減らさないと、京都メカニズムによって排出権を大量に買わなくてはいけません。これが、温暖化・気候変動問題で日本の一番のリスクでしょう。

過去の排出権のエントリー

「緩和策*3」なので上の話とは直接関係はないが、日本はもしかしたら莫大な税金を京都メカニズムで払わなくてはいけない危機がありますね。これが日本の気候変動・温暖化に対しての一番のリスクかもしれないですね。もう結構「深い不確定性」の領域をでているようです。ヘッジファンドがこの権利を買いあさっているので、最終的に日本が買い取ると分かっている状況なら、税金はヘッジファンドに最終的に取られてしまうでしょう。このお金をなんとか途上国の発展や適応策に使えないものだろうか。

ヨーロッパも京都議定書を作るときには、この排出権の取引には反対だったはずなのに、今は一番この方法を使っています。こういうところが政治がうまいなと思うところです。規制路線が決まると、流れに逆らわず、その流れを最大限に利用する。世界覇権の争いと駆け引きの歴史が長かったので、「正義が必ず勝つ」とか、「誠実になれば正しさが伝わる」とは思っていないのでしょう。