経済モデルの心構えは「急がば回れ」

今日はADAM会議の一日目。僕が属している「気候変動・温暖化への適応策」の研究チームで興味深い話が話題になった。

マクロ経済モデルをつくっているチームに質問がでた。


「ところで、誰がターゲットユーザなの?」



「それはこのモデルを信用しない人たちです」



「はっ!」


せっかくモデル化をしているのに、使ってもらいたい人がモデルを信用していない人って、一休さんにとんち合戦でも仕掛けられた将軍さまの気分だった。

この謎かけの話は心は:

  • 気候変動の経済モデルの信頼性は高くない。
  • その為、モデルからの経済的数値をそのまま信用してもらっても責任が取れない。
  • だから、モデルを参考程度にとって、行動にでてくれる人の方が助かる。


言われてみれば大したことではないが、この事をきちんと政策決定者は踏まえていたほうがいい。こんな話がある。経済モデルのcost-benefit analysis(費用便益分析)で出た数字を見てから意思決定をすると、その後簡単にその決定を変更できないそうだ。その為、「ちょっと試しにポッチとな」とcost-benefit analysisを行うと、取り返しのつかない意志選択をしてしまうことになる。


この事もあり、「Stern review」でも、ある一定のシナリオに基づいたある一つの経済モデルの回答は信頼できないとしている。経済モデルで一番役立ちそうな事は、「定数をフレームワークにまとめること」であり、その過程でのいろいろな考察である。ここを無視して、いきなりアウトプットの「一つの数字」に執着するのは意味が無い。

経済モデルを実用するための心構えは「急がば回れ」である。回り道の間に色々学ぶことがありますよ。




いつものことだが、会議場にとじこもりで、ブタペストの街ををまったく見ていない。