南アのStokvelに見る金融・保険業の「信頼関係の大切さ」

この夏は、あまり出張がなくてよい。秋から日程が凄いことになっているので、夏は家でのんびり過ごせる事に感謝。そうは言っても、私用で出かけることも多々ある。

友人の結婚式にドイツに行ったので、カーボンオフセットの代わりに、Kiva.orgのマイクロ・ファイナンスで「適応策」を支援した。理論的には、カーボンオフセットの会社を通じて、排出量を買うのがいいのかもしれない。しかし、カーボンオフセットの制度の不透明な部分に反して、マイクロ・ファイナンスで直接、気候変動に影響がありそうな人達を支援する方が僕には性に合っている。それに、カーボンオフセットが免罪符になっては意味はない。「罪悪感」は取っておくべきだ。

その点に議論は過去に書いてあります:


今回は、カンボジアの小売店を経営する彼女を支援した。


カンボジアは気候変動に影響を受けやすく、また、国も真剣この問題に取り組んでいる。彼女の仕事は直接気候変動の影響をうけやすい職種ではないが、来年、彼女の様な人達が関わるカンボジアのプロジェクトをするかもしれないので、ある意味「精神論」的な先行投資として彼女を選んだ。




kiva.orgの様な近代的なマイクロ・ファイナンスで一番有名なのは ノーベル賞を受賞したグラミン銀行。この様な近代的なマイクロ・ファイナンスが始まる前から、小規模の融資の助け合いは行われてきた。

僕がプロジェクトで関わっている南アフリカでは、Stokvelなるものがある。直訳すると「貯金(備蓄)クラブ」となる。このStokvelに色々な金融関係のビジネスのはじまりを見ることができる。Stokvelは大まかにわけて三つのビジネスがある:

  1. マイクロ・ファイナンスに似たような、お金を貸し借りする機能(銀行・投資業務)
  2. あるイベントに対しての保険機能。ほとんど場合、イベントとは自分の葬式(生命保険業務)
  3. 穀物に備蓄機能


穀物の備蓄は、生活に一番基本の食の確保で大事なのはわかる。銀行・投資業務と生命保険業務が、アフリカの田舎で穀物の備蓄と同じくらい重要なのである。

銀行・投資業務が必要ということは、良くも悪くも、グローバリゼーションでアフリカの片田舎まで資本主義が浸透していることになる。金融が食と同じぐらい大事だいうことは「先立つ物は金」的なの考えが、「腹が減っては戦ができぬ」的な考えと同じぐらい大事になっていることになる。彼らは、Stokvelでお金を借りて煉瓦や壷を作るプロジェクトや養鶏業を始めたりする。


生命保険業務がStokvelでダントツに人気なのは、葬式が彼らの文化で大事なのもあるが、「税金と死は必ずやってくる」的な考えが元にある。これはアフリカの人達だけでなく先進国の人にもいえることだ。アフリカで結婚がお金がかかるイベントだとしても、みんなが結婚できるわけではない。しかし、みんな、いつか死んでしまう。確実に起こるイベントなら、掛けておいても損はないと、おもうのだろう。

気にしていなかったが、生命保険業務とはなんとも「衣食住」のビジネスとも張り合える、基本的なビジネスなのだろう。


面白い事に、効率の良いといわれるビジネス社会が、Stokvelに見ることができる。通常、小さい村でもいくつものStokvelが存在する。別の Stokvelで掛金が違ったりして、需要と供給の競争原理が働いている。また、同じ家族でも別々のStokvelに入って、ひとつのStokvelが失敗した時のリスクを回避したりできるようにしている。まだまだ、Stokvelごとにユニフォームがあり、クールなデザインでメンバーを集めようとしている。まさしく、マーケティング

南アフリカではグラミン銀行の様な、近代的なマイクロ・ファイナンスがあまり成功していないといわれている。マイクロ・ファイナンスを企画しているNGO を尊敬しているが、トップダウン的にひとつのNGOがこれらの業務を運営するより、自然発生的に始まったStokvel+市場原理の方がうまく村々の違う要求や状況に柔軟に対応できているのかもしれない。


もちろん、細切れのままのStokvelでは、スケールアップして本当の保険業者と繋げることは難しいので、公的機関、又はNGOもStokvelをまとめたり、保険業者と話をするなどの役割もあるだろう。もちろん、そのうちNGOもStokvelから南アフリカにあったマイクロ・ファイナンスを提供できるようになるかもしれない。


とにかく、ひとついえることはStokvelにしても、マイクロ・ファイナンスにしても、成功しているのは「借り手と貸手の間で信頼関係が成り立っているものだ」。借り手が貸手を知っていると、信頼してお金を借りられるし、お金を返さなくてはいけないとよりいっそうおもう。同じく、貸手が借り手を知っているなら、適正な金利を設定できるので、貸手にもリスクが少ない。前にも書いたが、うまくいっているマイクロファイナンスは大手銀行より、借り金の返済率が高い。これは生命保険でも同じだろう。自分の最後の大イベントを企画するのに、信頼できない人を頼りにはできません。マジで!


アフリカの貧困層を助けるプロジェクトをして、「信頼関係の大切さ」など、こちらこそ学ぶことが多く助けられます。


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