「コモン・アプローチ」の改定

ファイナンス系のプロジェクトで、環境をきちんと考慮することが求められてきている。そのため色々なフレームワークが今まで試されてきた。国連の主体だったり、ドイツ、日本、アメリカなど国々別々だったり、NGO主体だったりしたのもあったが、これらはあまりうまくいっていない。

うまくいったのは、世界銀行や国際金融公社(IFC)のSafeguard(現Performance Standards)がもとになっているものだ。これは、環境マネージメントが銀行の業務とうまく関連づけられていたことと、そのスペシャリストの国際機関が中心になっていた事によるものだと思う。

この系列で一番今注目を浴びているのが、赤道原則(Equator Principles)である。これは、民間銀行がプロジェクト・ファイナンスに関わる環境マネージメントの在り方を定めている。問題は色々あるが、いい方向に進んでいる。最近知ったのだが、OECDが輸出信用機関(ECA)に課している、環境マネジメントの方針が先月改定になったらしい。その「コモン・アプローチ」と言われる内容を見てみると、これまた赤道原則やIFCのPerformance Standardsにそっくりである。日本貿易保険におけるガイドラインもコモン・アプローチに併せて制定されている。
http://nexi.go.jp/service/sv_m-tokusyu/sv_m_tokusyu_0707-2.html


基本的にこの系列は:

  1. プロジェクトの環境影響の可能性をカテゴリー分類する(影響の大からA、B、C)。
  2. そして、AやBのカテゴリのプロジェクトに本格的な環境アセスメントをしたり、環境マネージメントプランと立てる。

大手の投資銀行の環境担当者をインタビューしたとき、銀行だけでなく、顧客はECAも赤道原則を取り入れたら、ひとつの基準でみんな困惑しなくなり、透明性も増すのではと言っていた。

その方向に向かっているのはうれしい。しかし、ECAが取り入れる「コモン・アプローチ」は赤道原則より基準が緩くなっている。例えばBのカテゴリーのプロジェクトに対する環境アセスメントを要求や公開が、赤道原則より緩い。ECAは公的な機関であり、どちらかといえば民間銀行を監視や指導する立場にあるはずである。それが民間に規制より緩くなっていては、公的機関の規制の存在意義を問われかれない。投資銀行でインタビューしたとき、ECAに対してこうも言っていた:

「彼らはいつも後に来るから、あまり主導権をとれないし、重要でもない」。

ECAは海外プロジェクトのリスクを軽減するのになくてはなならない存在だ。環境のリスクの方面でもがんばってください。

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