2100年までの温暖化の振り幅
最近、モデルの信憑性を話し合う機会とか、レポートを出す研究がある。自分は社会科学の分野で環境の研究にたずさわっているが、物理なのハードコアな科学でも同じようだ。
先週、気候変動の会合で、気候モデルを作っている物理学者と色々話した。いろいろは気候モデルが出す結果の違いに、どの様に対応してよいか、悩むらしい。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の出した初期の予測で、2100年までに温暖化の度合は1.5度から4.5度だった。今度更新された予測では、2度から4.5度に変わっている。どちらにしても予想に2.5度以上の幅がある。この幅の説明が難しいらしい。
勝手に、「それなら真ん中をとって、平均して3.25度ぐらい上がるのか」などと解釈する人も多いらしいが、その解釈は間違っている。今現在、どの気候モデルが正しいか、もしくは、どれが他より正確かは言えないので、モデルが出す結果の分布を探ることは不可能である。すなわち、これでは統計的に色々なモデルの結果の中心点を探ることが出来ないことを示している。
上にWikipedia.orgに載っているIPCCの気候モデルを貼っておいた。
例えば、3度から4度の間に4つの気候モデルがあるので、大まかな統計的な考えでは温暖化は「3度から4度」の間で起こりそうだと考える。しかし、一番上の茶色のモデル*1が正しい可能性もある。そして、それがどれぐらい正しいかを確立で求めることは出来ない。
すなわち、「地球温暖化は2度から4.5度の間で起こりそうだ」と、しかいえない。前にも書いたが、これが科学の限界であると思う。どんなに科学が発達しようとも、この振り幅がゼロになることはない。
この説明をしてくれた気候モデルの研究者が、「英国気候変動プログラム(UKCIP)の前所長が、科学者は政治に関わるべきではないと言っていたから、がっかりしたよ」と、言っていたが、僕はその前所長の言っていることが分かる気がする。
僕は「政治家は政策決定に責任を持つべきである。」と、とらえている。科学者の仕事は、気候モデルの製作に全力をつくし、政治家はその不確定な要素があるモデルから政策を作ることに責任を取る。政策決定は科学者の仕事ではないし、モデルは意志決定の答えをくれはしない。そして、気候モデルの製作は、とうぜん政治家の仕事では無い。お互いの仕事を尊重しあい、自分の仕事に責任を持つ事が大事だ。
自分で書いていて、耳が痛い部分があるが、僕も気候変動の研究に関わるものとして自分の仕事に責任を持とう。
*1:実は日本の国立研究所のモデル