ゴキブリ式な開発計画と意思決定

池田氏のこの発言はファイナンスの世界だけでなく、「適応プランニング」として、発展問題でも言われている。

本書の提案するリスク管理は、ゴキブリ式である。ゴキブリのセンサーは空気のわずかなゆらぎを検知する機能しかなく、それに反応して瞬時に逃げるのが彼らの唯一の防御システムだという。これはアバウトで無駄が多いが、結果的にはこれで彼らは数億年、生き延びてきた。高等動物のように特殊な環境に繊細に適応すると、環境が変わったとき全滅してしまうが、ゴキブリの単純な防御機構は環境の変化に強いのだ。

従来の開発問題はどれだけ将来予測し、素晴らしい計画を立てるかだったが、「適応プランニング」は連鎖的な短期の意思決定と状況学習の連続である。さらに、そこに「堅固な意思決定」という物が入ると、利益率や効用の最大化だけでなしに、どれだけ将来の意思決定の節のオプションが縮まらないかも考える。

時間が無いので今日はここまで、コンファレンスがおわり、急いでストックホルムに今から帰る。そして、本部の人と今日明日会議。スウェーデンでは珍しい休日出勤だろう。


コンファレンスでは色々学んだので、その内ここに書きます。

過去の「堅固な意思決定」と「適応」の話

何十年も前から、Operation researchなどでCost-benefit analysisなどの効用最大化による意思決定論の代わりとして堅固な意思決定論があります。効用最大化とは「勝つため」の意思決定です。その頃の研究者達で、もっと守りの意思決定論もあってもいいのではと「負けない為」意思決定論として、「堅固な(robust)」意思決定論というものを作ってきました。

この状態で「答えを出す」には、無理に「未来を予測」するのではなく*1、出来るだけ多くの未来を考えて、その未来が対応する多くの回答を考えること。

欧州でプロジェクトに参加している事もあり、「気候変動は起こっていると思っている」っていうか、「堅固な意思決定論からして「気候変動が起こっている不確定性を考慮したほうがいいと思っている」派である。これは前回も書いたが「適応策」のエリアでの話であり、状況に応じた話である。

知能動物として、事故後に「適応」するのでなく、事前の「適応」するすべはないのだろうか。気候変動が「人が起こしたか」どうかの議論と同じぐらいこの議論ももっとされるべきだろう。