日本の温暖化「緩和策」は「後だしジャンケン」でわざと負けるようなものか?

木村先生のブログをよく読んでいるが、この意見には同意するところが多い。

私は、地球温暖化が陰謀なのか否かについては熟知していませんし、正直申し上げて、規制の流れが既往路線として定まってしまっている今、その真偽を究めることが最優先課題であるとも思っていません(その手の話は、世の中に氾濫しております。金融界では、BIS規制と呼称される自己資本比率規制が、その典型例です)。
地球温暖化を真実として鵜呑みにするのではなく、また、地球温暖化を陰謀として無視するのでもなく、現実のグローバルな規制動向にしたたかに対応する外交戦略こそが求められているのではないでしょうか。


自分の、気候変動・温暖化のプロジェクトに関わっているが、「適応策*1」に関わっている社会学研究者なので、木村氏の様に本来、「地球温暖化が真実なのかとか、陰謀なのかとか」にあまり口出しするべきではないかもしれません。結局、気候モデル研究者の受け売りになってしまっているだけだからです。

前にも何度か書いたが、温暖化によってGDPなど日本が受ける被害はそれほど多くはないでしょう。しかし、既に規制路線になってしまっている京都議定書が守れないと、日本は税金で排出権の買取をしなくてはならなくなるでしょう。ヘッジファンドは排出権を買いあさっています。それは、将来日本がこれを買い取ることがほぼ決まってしまっているからです。買い取り先が決まってしまっている市場で、先に物を買いあさって、後から高値で売ることなど容易に考えられます。

つまり、後だしジャンケンでわざと負けるようなものです

気候変動・温暖化が起こっているかどうかを、議論し続けるのが正論かもしれません。これには私も賛成です。しかし、国際的な政治力学を考えると、この規制路線は変わることはないでしょう。

ヨーロッパも京都議定書を作るときには、この排出権の取引には反対だったはずなのに、今は一番この方法を使っています。こういうところが政治がうまいなと思うところです。規制路線が決まると、流れに逆らわず、その流れを最大限に利用する。世界覇権の争いと駆け引きの歴史が長かったので、「正義が必ず勝つ」とか、「誠実になれば正しさが伝わる」とは思っていないのでしょう。

気候変動・温暖化がうそだと言っているわけではありません。気候変動が二酸化炭素の影響があるかないかに関わらず、不確定としての可能性が高いと思っています。この事を考慮しないことは、僕関わっている「二度目のチャンスがない」アフリカやアジアの貧困層では大事なことだと思っています。

できれは、日本の税金がヘッジファンドに取られるぐらいなら、「適応策」の分野のアフリカやアジアの貧困層に回してもらえたらと思います。

気候変動・温暖化と二酸化炭素排出の関係が不確定だと言われていても、二酸化炭素排出と京都議定書の関係は既成事実として確定しています。確かに、日本はもともと効率の良い経済だったので、乾いた雑巾を絞るように、二酸化炭素排出を削減するのは簡単ではないかもしれません。いまだに、ヨーロッパは日本の2倍非効率と言われています。しかし、いつまでもこの事を言い訳に出来なくなってきています。いまEUが作っている目標は日本の効率の上を行くものです。

いつまでも、愚痴を言っていても、既成事実は変わらないでしょう。日本はすばらしい環境技術があります。民公一体になって、真剣にこのことに関わらないと本当に、多額の税金を京都議定書の為に使わなくてはいけなくなります。それに、石油もどんどん値上がりしています。石油依存の経済からも思っているより早く抜け出すほうがいいかもしれせん。


それにしても、木村氏の「専門家ではないことには口を出さない」は清いですね。見習いたいと思います。まずはブログのヘッドの変更からします。

過去の温暖化・気候変動のメモ

欧州でプロジェクトに参加している事もあり、「気候変動は起こっていると思っている」っていうか、「堅固な意思決定論からして「気候変動が起こっている不確定性を考慮したほうがいいと思っている」派である。これは前回も書いたが「適応策」のエリアでの話であり、状況に応じた話である。

知能動物として、事故後に「適応」するのでなく、事前の「適応」するすべはないのだろうか。気候変動が「人が起こしたか」どうかの議論と同じぐらいこの議論ももっとされるべきだろう。

ジャエガー教授はそれに「まった!」といいたいそうだ。彼は気候変動はそれほど「世界GDP」には影響はないと思っているそうである。彼のいいたいことは、世界は戦争はエイズなどのいろいろな問題を吸収してきた、だから気候変動の被害も吸収してしまうだろうとのこと。注目しなくていけないのはこれは、気候変動が問題ないといっているのではない。

戦争は実際のところGDPを増やしてもおかしくないし、過去にもそうなっている。しかし、それで、戦争が問題ないとはいえない。GDPは問題点を計測する一つの基準にしかなり得ないのだ。

年間750億ドルを「飲料水と衛生状態の改善、そして教育」に使う事は気候変動・温暖化対策に反しないことなのです。生活環境が向上した発展途上国は、気候変動により良く対応できるはずです。ロンボルグ氏の本を読んでいないので憶測ですが、彼もその事には触れているのではないでしょうか。

*1:二酸化炭素排出の話ではなく、気候変動が起こっている不確定化の条件で、どう事前に適応していくかの話。ちなみに二酸化炭素排出の話は「緩和策」で全く別分野です。