数学と科学の違いに見る科学の定義

上に書いた事とは別の着眼点から見た科学の定義です。勉強になりました。

すでに多くの回答が寄せられているのだけど、私の回答は以下のとおり。
数学は人が採点するが、科学は宇宙が採点するから

数学(mathematics)では、公理(axiom)から定理(theorem)を導き出す。だから最後の最後には「公理でそう決めといたから」と言い切ることが出来る。

しかし、科学(science)では、その公理に相当するもの=事実(fact)は宇宙が決める。この公理に相当するものを追いかけるのが科学でもあるのだけど、なにしろ全宇宙の全状態というのは我々には知る由もなく、それゆえどうしても理論(theory)と事実が一致しない余地が残ってしまう。

もっとも、数学や科学が今の形になったのは、長い歴史の中では比較的最近のこと。数学もその歴史のほとんどは、むしろ「ややこしそうな現実を、なるべく簡単に理解するにはどうしたらよいか」という過程で発展してきた。高校までに習う数学が、「公理から何を導き出す」のではなく、「現実をなるべく簡単に理解する」ことに重点が置かれているのも多分それが理由。

しかし、この両者は実のところ「公理を人が設定できるか否か」という点において決定的に異なる。数学は、自分で作ったゲームをプレイすること。科学は、別の誰かが作ったゲームのルールを推察すること。数学で反証可能性が問われないのはだから当然とも言える。その代わり数学の証明では例外は許されない。科学では逆に、反証可能性が常に問われるのに対し、「より現実に即した法則」が見つかるまでは、ある法則は「十分正しい」し、そこから外れた部分は「統計誤差」として扱ってもよい。相対論以前のニュートン力学がそうだったように。

このように根っこのところでずいぶん異なる両者だけど、両者の相性は実にいい。結局のところ、宇宙は完全な無秩序ではなく、無秩序でないところには理論が成立する余地がある。そして理論が成立するところに、数学がある